Facility Types

施設種別で見る庭づくり

グループホーム、デイサービスセンター、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、障害者福祉施設——施設の種類によって、庭に求められる役割は異なります。それぞれの特性に合わせた設計のポイントを、実例とともに解説します。

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対象になる主な高齢者福祉施設の種類

本来的にお庭が果たす役割が大きい高齢者施設には次のようなものがあります。

施設種別を問わず、環境デザインの重要性は科学的にも支持されています。オーストラリアの研究チームによるMotealleh ら(2019, Health & Placeのナラティブレビューでは、長期入所型の高齢者施設における屋外景観デザインの介入が、施設種別を超えて入居者の心理的・身体的ウェルビーイングに寄与しうることが報告されています。施設の種類ごとに求められる機能は異なっても、「自然な景観を取り入れる」という設計思想の効果は共通しているといえます。

特別養護老人ホーム(特養)

常時介護が必要な高齢者が入所する施設です。食事、入浴、排泄などの介護や、健康管理、機能訓練などを行います。比較的費用が安価な公的施設です。

介護老人保健施設(老健)

在宅復帰を目指す高齢者が、リハビリテーションや介護を受ける施設です。一定期間(原則3ヶ月)入所し、集中的なケアを受けます。詳しくはリハビリ・機能訓練の庭もご覧ください。

介護医療院

長期的な療養が必要な高齢者が入院する施設です。医療的なケアやリハビリテーションが中心となります。

養護老人ホーム

経済的な理由で生活に困窮している高齢者が入所する施設です。生活支援や健康管理を行います。

軽費老人ホーム

比較的低料金で利用できる高齢者向けの住宅です。食事サービスや生活相談などが提供されます。

有料老人ホーム

民間の高齢者向け住宅です。介護サービスや生活支援サービスを受けることができます。費用は施設によって異なります。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

バリアフリー構造の住宅で、介護サービスや生活支援サービスを受けることができます。自立した生活を送りたい高齢者向けです。

グループホーム

認知症高齢者が少人数で共同生活を送る施設です。家庭的な雰囲気の中で、認知症ケアを受けられます。詳しくは認知症ケアの庭もご覧ください。

老人デイサービスセンター(デイサービス)

日帰りで施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けることができます。在宅生活を支援する役割があります。

老人福祉センター

地域高齢者の交流や健康増進のための施設です。様々な講座やイベントが開催されます。

幼老共生施設のランドスケープデザイン

グループホームの

認知症高齢者が少人数で共同生活を送るグループホームでは、家庭的な雰囲気の中で安心してケアを受けられる庭づくりが重要です。地域に開かれた運営を行う施設も多く、庭が地域とのつながりを生む役割も担います。

🔍 スタッフが抱えている具体的な「悩み」

  • 庭の段差やぬかるみで、ヒヤリハットが起きている。
  • 庭はあるが活用されておらず、入居者のQOL向上に繋がっていない。
  • 雑草抜きや清掃に、スタッフの手間や外部委託コストがかかりすぎている。
  • 他の施設と差別化できず、見学者への「決め手」に欠ける。

💬 「悩み」から生まれるご要望の一例

  • Case1: 施設の「安全性」を高めたい(転倒防止・スロープ・手すり)
  • Case2: 「施設(エントランス)の印象」を良くして入居率を上げたい
  • Case3: 「管理コスト(雑草・清掃)」を下げたい
  • Case4: 「園芸療法」や「リハビリ」ができる庭が欲しい

グループホームのガーデン施工例

コンクリートだけど滑りにくい洗出し舗装です。プランターや水洗いまで車いすや椅子に腰かけて作業できます。地域に開かれたグループホームとして運営されており、小規模だからこそ入所者がみんなで安心で楽しく暮らせる施設です。

認知症ケアに配慮した「回想の庭」の詳しい設計手法は認知症ケアの庭ページで詳しく解説しています。

デイサービスの外構・送迎動線

日帰りで施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けるデイサービスセンターでは、送迎車両の出入りが多く、ロータリー・駐車場の動線設計が特に重要になります。

デイサービスセンター施設のロータリー・駐車場整備における外構設計

ロータリーは測量設計事務所だけでは難しく、弊社が進めるような公園計画と同じランドスケープデザインや動線設計、緑地設計が必要となります。介護付有料老人ホームにおける開発工事の設計実績も豊富です。

💬 デイサービス特有のご要望

  • Case1: 「送迎(車寄せ)」スペースを安全で機能的にしたい
  • Case2: 雨の日の乗降が危険で混雑するのを解消したい
  • Case3: 歩行者動線と車両動線を安全に分離したい
  • Case4: 見学者に良い印象を与えるエントランスにしたい

特別養護老人ホーム「ライフの学校 萩の風キャンパス」

庭のリノベーションは、単なる施設の改修に留まらず、現代の日本が抱える高齢化社会における福祉施設のあり方や、地域コミュニティの再生において、多くの重要な意義を持つ先駆的な取り組みです。

特別養護老人ホーム萩の風キャンパスの庭のリノベーション

1. 「閉鎖」から「開放」へ

その象徴である垣根を取り払い、庭を誰もが自由に訪れることができる「憩いの場」として地域に開放しました。施設を「閉ざされた場所」から「地域に開かれた場所」へと転換させ、高齢者と地域住民が日常的に交流できる環境を創出した点で画期的です。

2. 多世代交流の拠点としての役割

リノベーションされた庭は、子どもから大人まで、多様な世代の人々が集う交流の場となります。子どもたちの笑い声や遊ぶ姿は、入居する高齢者にとって大きな喜びや生きがいとなり、認知症の予防や進行抑制にも良い影響を与えることが期待されます。

3. 「眠っていた資源」の活用と地域の物語の継承

地域で使われなくなった家具や植木、懐かしい道具などを再利用しています。これらは単なる「中古品」ではなく、一つ一つに地域の人々の思い出や物語が詰まっています。これらの道具が庭で新たな役割を得ることで、地域の歴史や文化が次の世代へと継承されていきます。

4. 高齢者の尊厳と「生活の質」の向上

開かれた庭は、入居者が社会との繋がりを維持し、一人の地域住民としての尊厳を保ちながら生活を送ることを可能にします。季節の移ろいを感じ、訪れる人々と会話を交わす日常は、単調になりがちな施設での生活に彩りを与えます。

5. これからの福祉施設のモデルケースとして

「萩の風キャンパス」の取り組みは、これからの日本における高齢者施設の目指すべき姿を示す一つのモデルケースと言えます。単に介護サービスを提供するだけでなく、地域コミュニティの核として、多世代が共生する豊かな社会を築いていくという新しい役割を提示しています。

障害者福祉施設・児童福祉施設・幼老共生施設

本来的にお庭が果たす役割が大きい施設には、高齢者福祉施設のほかにも、障害者福祉施設や児童福祉施設、複数の施設・サービスを組み合わせた幼老共生施設があります。

障害者福祉施設・児童福祉施設のランドスケープ
障害者福祉施設・児童福祉施設・幼老共生施設の詳細を見る

障害者福祉施設

障害者支援施設:障害のある方の生活介護や就労支援を行う施設。

障害者グループホーム:障害のある方が、少人数で共同生活を送る施設。

障害者デイサービスセンター:日帰りで、機能訓練やレクリエーションなどのサービスを提供する施設。

就労移行支援事業所:一般企業への就職を目指す障害のある方の支援を行う施設。

就労継続支援事業所:就労機会の提供や、就労支援を行う施設。

児童福祉施設

乳児院:乳児を養育する施設。

児童養護施設:保護者のいない児童や、虐待されている児童を養育する施設。

母子生活支援施設:経済的な理由などで生活に困窮している母子を支援する施設。

児童発達支援センター:発達に遅れのある児童の支援を行う施設。

放課後等デイサービス:障害のある児童や、発達に遅れのある児童の放課後等の支援を行う施設。

幼老共生施設・高齢者向けの複合施設

幼老共生施設・高齢者向けの複合施設には以下の組み合わせで、同じ建物内に施設や介護サービスが2種類以上あるものをいいます。

  • 「グループホーム」+「小規模多機能型居宅介護」
  • 「介護付有料老人ホーム」+「小規模多機能型居宅介護」
  • 「介護付有料老人ホーム」+「グループホーム」+「小規模多機能型居宅介護」
  • 「介護付有料老人ホーム」+「サービス付き高齢者向け住宅」
  • 「サービス付き高齢者向け住宅」+「小規模多機能型居宅介護」
  • 「特別養護老人ホーム」+「サービス付き高齢者向け住宅」
  • 「特別養護老人ホーム」+「グループホーム」+「小規模多機能型居宅介護」
  • 「介護老人保健施設」+「サービス付き高齢者向け住宅」

なかには医療機関との連携が万全で、「訪問看護ステーション」がある医療に特化した施設や、クリニックや薬局にコンビニエンスストア、地域包括支援センター、保育園や区民集会所などが入っている施設もあります。また、多くの施設においてケアマネージャーさんがいるケアプランセンター(居宅介護支援事業所)も建物内にあります。なお、「小規模多機能型居宅介護」とは、『デイサービス(通所介護)』を中心として、『ショートステイ(短期入所生活介護)』や『訪問介護』が加わった地域密着型のサービスです。

各施設種別に共通する設計の考え方

施設の種類は多岐にわたりますが、庭に求められる本質的な役割は共通しています。私たちは以下の4つの課題別クラスターを軸に、それぞれの施設特性に合わせた設計をご提案しています。

認知症ケアの庭

グループホームをはじめ、認知症ケアが必要な施設全般に。

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リハビリ・機能訓練の庭

介護老人保健施設をはじめ、在宅復帰を目指す施設に。

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病院・クリニックの庭

総合病院、リハビリテーション病院、介護医療院など医療施設の庭づくり。

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よくあるご質問

特別養護老人ホームと介護老人保健施設では、庭の設計に違いがありますか?

特別養護老人ホームは常時介護が必要な方が長期入所するため、安全性と癒しを重視した庭が求められます。一方、介護老人保健施設(老健)は在宅復帰を目指す方が多いため、実生活に近い動作訓練ができるリハビリ機能を重視した庭が効果的です。

デイサービスセンターの外構で特に注意すべき点は何ですか?

送迎車両の出入りが多いため、ロータリーや駐車場の動線設計が重要です。公園計画と同様のランドスケープデザインの視点で、安全な乗降スペースと歩行者動線を分離することで、雨の日でも危険なく利用できる外構になります。

障害者福祉施設や幼老共生施設でも同じような庭づくりができますか?

はい。障害者支援施設・障害者グループホーム・放課後等デイサービスなども、高齢者施設と同様に安全性・分かりやすさ・心地よさを重視した設計が可能です。特に幼老共生施設では、多世代交流を促す庭づくりが効果的です。

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参考文献

  • Motealleh, P., Moyle, W., Jones, C., & Dupré, K. (2019). Creating a dementia-friendly environment through the use of outdoor natural landscape design intervention in long-term care facilities: A narrative review. Health & Place, 58, 102148. DOI: 10.1016/j.healthplace.2019.102148

上記は本文中で言及したエビデンスの一次情報源です。詳細は各リンク先をご確認ください。

監修者コメント

飯沼伸久 代表・チーフランドスケープデザイナー

飯沼伸久(1級造園施工管理技士・2級ビオトープ施工管理士)

「同じ『高齢者施設』という言葉でも、特養と老健、グループホームとデイサービスでは、庭に求められる機能がまったく異なります。萩の風キャンパスのように、垣根を取り払い地域に開くという選択が最適な施設もあれば、閉じた安心感を優先すべき施設もあります。施設種別ごとの特性を丁寧に読み解くことから、設計は始まります。」

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