リハビリ空間としての庭の役割
屋内の訓練室だけでは得られない実生活に近い動作訓練が、庭では自然に行えます。段差の昇降、砂利道での歩行、ベンチからの立ち座りなど、生活そのものがリハビリのプログラムになるのが庭の強みです。
エビデンスに基づく機能回復支援として。スウェーデンの研究者Ottosson & Grahn(2005, Landscape Research)による高齢者施設での比較研究では、庭で余暇時間を過ごした入居者は、屋内で過ごした場合と比べて集中力(デジットスパン課題の成績)が有意に改善したことが報告されています。庭での時間が単なる気分転換ではなく、認知機能の回復にも寄与し得ることを示す知見です。
3つの設計要素で促す歩行意欲
① 歩きたくなる距離感と曲線
- 直線ではなく、ゆるやかなカーブで景色の変化を演出
- 歩行意欲を引き出す"目的地"の設定(ベンチ・花・木陰)
- 無理のない距離感で達成感を積み重ねられる周回路
② 素材の違いで運動を促す
- 砂利・木・石などの素材変化を歩行路に取り入れる
- 足裏感覚が刺激され、自然な歩行訓練につながる
- 車椅子でも通れる幅広・平坦な区間とのバランス設計
③ 座る・立つの動作を促す仕掛け
- ベンチの高さを立ち上がりやすく調整
- 手すりの位置を動線上の要所に配置
- 立ち上がりやすい角度・座面素材の工夫
季節の移ろいが実感できる介護老人保健施設の中庭
在宅復帰を目指す方が多く入所する介護老人保健施設(老健)では、実生活に近い動作訓練とQOL向上を両立するバイオフィリックデザインが効果的です。
人間が本来持つ「自然とつながりたい」という本能的欲求に基づき、建物や空間に植物、自然光、水、自然素材などの要素を取り入れることで、心身の健康(ウェルビーイング)や生産性向上を目指すデザイン手法です。




高齢者施設の庭の役割とデザインのポイント
庭の役割
- 癒しとリラックス効果
- 運動機能の維持・向上
- 認知機能の維持・向上
- 交流の促進
- 季節の変化を感じる
デザインのポイント
- 安全性(段差解消・手すり設置)
- バリアフリー設計
- 五感に訴えるデザイン
- 四季の変化を楽しめるデザイン
- 多様なアクティビティへの対応
具体的なデザインの例
車椅子でも通れる幅広・平坦
季節の花・入居者参加型
野菜・ハーブの栽培
ベンチ・テーブル設置
手洗い・足洗い
木陰・パーゴラ


よくあるご質問
リハビリを促す庭には、どのような工夫が必要ですか?
直線ではなくゆるやかなカーブで歩行意欲を引き出す動線設計、砂利・木・石など素材の違いで足裏感覚を刺激する舗装計画、ベンチの高さや手すりの位置を工夫した「座る・立つ」動作を促す仕掛けの3点が重要です。屋内訓練室では得られない、実生活に近い動作訓練が可能になります。
介護老人保健施設(老健)の中庭ではどのような点に配慮すべきですか?
在宅復帰を目指す方が多いため、車椅子でも通れる幅広・平坦な散歩道、季節の花を楽しめる花壇、野菜やハーブを育てる菜園など、実生活に近い「バイオフィリックデザイン」を取り入れることで、機能訓練とQOL向上を両立できます。
医療施設のリハビリテーション病院とは設計の考え方が異なりますか?
基本的な考え方は共通しますが、病院・回復期病棟向けにはより医療的な観点を含めた設計が必要です。病院・クリニックのリハビリガーデンについては医療施設ページで詳しく解説しています。
参考文献
- Ottosson, J., & Grahn, P. (2005). A comparison of leisure time spent in a garden with leisure time spent indoors: On measures of restoration in residents in geriatric care. Landscape Research, 30(1), 23–55. DOI: 10.1080/0142639042000324758
上記は本文中で言及したエビデンスの一次情報源です。詳細は各リンク先をご確認ください。
監修者コメント
飯沼伸久(1級造園施工管理技士・ビオトープ施工管理士)
「リハビリは"やらされる"ものでは続きません。庭のカーブ一つ、ベンチの高さ一つが、利用者様の『もう少し歩いてみよう』という気持ちを引き出します。屋内訓練室にはない意欲づくりこそ、庭の一番の価値だと考えています。」
リハビリの庭づくりも、
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