高層集合住宅や再開発エリアが密集する都市部では、地上の道路から一段高い人工地盤上に園庭・遊び場を設けるという設計手法が、しばしば採用されます。ここでは、その設計思想が持つメリットと、あわせて向き合うべき課題について整理します。
都心部・大都市圏では、待機児童解消のための保育施設整備が急速に進む一方で、屋外遊技場(園庭)にふさわしい用地の確保そのものが年々難しくなっています。地価の高騰、既存市街地の高密度な土地利用、周辺住民との近接性による安全・騒音への配慮など、複数の制約が同時に重なるためです。
こうした状況の中で、認可基準を満たす屋外遊技場を敷地内に確保できない保育施設は、近隣の公園を代替地として活用する「代替園庭」という運用に頼らざるを得ないケースも少なくありません。しかし、道路横断を伴う移動のリスクや、時間帯によって使用できる遊具・空間が保証されないといった不安定さもあり、あくまで次善の策にとどまります。
こうした背景のもと、再開発エリアの高層集合住宅においては、「人工地盤上に専用の園庭を設ける」という設計手法が、大都市特有の土地制約に対する有力な解を提供してきました。品川シーサイドのようなプロジェクトは、まさにこの考え方を体現した先行事例のひとつだといえます。次章では、この人工地盤という選択肢が持つメリットと課題を、具体的に見ていきます。
この設計の最大のメリットは、「歩車分離(歩行者と自動車の空間的な完全分離)」を、都市の過密な環境下で垂直方向に実現している点にあります。地上の道路から一段高い人工地盤上に園庭を設けることで、自動車との接触事故リスクを物理的にゼロに近づけることができます。これは保護者にとって非常に強力な安心材料となります。また、高層集合住宅の敷地内に「専用の広場」が確保されることで、外部の不審者や第三者の侵入を制限しやすくなり、管理された安全な領域(セキュアな空間)が形成されます。
品川シーサイドのような再開発エリアでは、居住空間(住宅)、働く場所(オフィス)、そして保育園が同じ敷地内に配置されています。これは理想的な「コンパクトシティ」モデルです。居住棟から保育園への移動が敷地内で完結するため、通勤(通園)時の交通リスクが軽減されます。都市の利便性を享受しながら、保育園というコミュニティを居住棟のすぐ近くに置くことは、共働き世代が多い高層住宅住人にとって、ワークライフバランスを維持するための不可欠なインフラとなっています。
安全性が確保される一方で、人工地盤上の遊び場には特有の課題も存在します。設計や運用の際には、これらを補完する工夫が求められます。
ISSUE 01
土や草木に直接触れ、虫を追いかけ、傾斜を駆け上がるような「地面そのものの多様性」が人工地盤では欠けがちです。安全である反面、環境が「均質化・無菌化」しやすく、子どもの身体感覚やリスクを察知する能力の発達にどう寄与させるかが課題となります。
ISSUE 02
高層住宅に囲まれた人工地盤は、ビル風の影響を受けやすく、また周囲の建物の影によって日照時間が限定される場合があります。園庭の環境改善(植栽の工夫や風除けのデザイン)が不可欠です。
ISSUE 03
人工地盤は「居住者専用」になりやすく、地域のコミュニティから孤立する「島」のようになる懸念があります。開かれた保育園であるためには、あえて外部との接点を作るプログラムや、地域に開かれた園庭のデザインが重要になります。
〒140-0002 東京都品川区東品川4丁目
こちらは、代表・飯沼がURの関連会社(知的所有権事業団)に勤めていた当時、先輩のもとで造園監督員として施工管理を担当した物件です。品川シーサイドという再開発エリアにおいて、居住棟に隣接する人工地盤上の広場・庭園として、公園的な流れのある植栽、花壇、樹脂デッキ、パーゴラなどを組み合わせた外構・造園工事を行いました。上述の「人工地盤上の遊び場」が抱える課題——地面の不在や微気候の制約——に対し、当時から植栽計画やパーゴラによる緑陰づくりを通じて向き合ってきた、代表にとって原点ともいえる現場です。
高層集合住宅の人工地盤上に、公園のような自然な流れを持つ植栽帯と花壇を配置。均質になりがちな人工地盤に、季節ごとの表情の変化と緑陰をもたらしました。
耐久性の高い樹脂デッキと、モッコウバラを絡ませたパーゴラを組み合わせることで、住民が腰を落ち着けられる滞留空間を創出。日照や風の影響を和らげる緑のシェードとしても機能します。
代表・飯沼はこの現場で、URの関連会社の一員として先輩の指導のもと造園監督員を務め、大規模再開発における外構・造園工事の施工管理を経験しました。この経験が、後の園庭デザイン・園庭設計における「安全性と豊かさの両立」という視点の礎になっています。
大都市で保育に携わる先生方や設置者様が抱える「園庭をどう確保するか」という悩みに、正解はひとつではありません。品川シーサイドビュータワーで造園監督員として現場に立っていた頃から、私はずっと「限られた人工の土地に、どう本物の豊かさを宿らせるか」を考え続けてきました。人工地盤上の遊び場は、歩車分離という都市ならではの安全性を実現できる一方で、地面の多様性や微気候、地域とのつながりという課題も抱えています。だからこそ、鉢植えや起伏のあるデッキで自然の揺らぎを取り戻したり、近隣の公園への散歩を積極的な保育プログラムに組み込んだりと、環境そのものをデザインする視点が欠かせません。武蔵野市・三鷹市・調布市・西東京市・小平市・東久留米市・清瀬市・東村山市・小金井市・国分寺市・府中市・狛江市・稲城市・多摩市・練馬区・杉並区・世田谷区・中野区など多摩東部エリアはもちろん、都心の高層集合住宅や再開発エリアに付随する保育施設の園庭についても、これまでの現場経験を活かしたご提案が可能です。安全性と豊かな成長環境、その両方をあきらめない園庭デザインについて、ぜひお気軽にご相談ください。
グッドデザイン賞・国土交通大臣賞受賞 株式会社アトリエアムニー代表 飯沼伸久
埼玉アトリエ(鶴ヶ島市)から関越道・中央道・新青梅街道を経由してスムーズにアクセス可能。武蔵野市・三鷹市・調布市・西東京市・小平市・東久留米市・清瀬市・東村山市・小金井市・国分寺市・府中市・狛江市・稲城市・多摩市・練馬区・杉並区・世田谷区・中野区など多摩東部・都市近郊エリア全域の保育園・幼稚園・認定こども園で設計・施工実績あり。施工後の定期安全点検・植栽管理・台風時の緊急対応まで伴走します。
鶴ヶ島市・川越市・坂戸市・東松山市・日高市・毛呂山町・越生町・鳩山町・ときがわ町・川島町・吉見町・滑川町・嵐山町・小川町・東秩父村など比企・西武エリア全域の保育施設で施工実績あり。さいたま市・熊谷市・秩父市・所沢市・飯能市・深谷市にも対応。雑木林の多い里山エリアの保育施設向け園庭デザインも得意としています。
宮城県仙台市全域(青葉区・若林区・太白区・泉区・宮城野区)ほか東北各県。群馬県:前橋市・高崎市、栃木県:宇都宮市など関東各地にも出張対応。品川シーサイドビュータワーのような都心の再開発エリア・高層集合住宅に付随する保育施設や、全国の保育園・幼稚園・認定こども園・学童保育施設における「園庭デザイン・園庭設計」はお気軽にご相談ください。