By childrenの余白:1993年、高野文彰氏への「押しかけ弟子入り」から始まった住民参加のプロセスデザイン

Our Origin, Since 1993

監修:株式会社アトリエ アムニー代表取締役 飯沼伸久(1級造園施工管理技士・ビオトープ施工管理士 在籍/2008年創業) 

1993年、「押しかけ弟子入り」から始まった、
「By children」という園庭の思想

住民や子どもたち自身の手によって作られた、使い方の決まっていない余白のある遊び場のイメージ 廃材や自然素材を組み合わせた、使い方が決められていないアドベンチャー・プレイグラウンドのイメージ

私、飯沼伸久のランドスケープアーキテクトとしての歩みは、1993年に始まりました。当時、日本の造園界に新風を吹き込んでいたランドスケープの巨匠・高野文彰氏のデザインと思想に深く憧れていた私は、アポイントも紹介もないまま、ただ「この人のもとで学びたい」という情熱だけで高野ランドスケーププランニングの門を叩きました。いわば「押しかけ弟子入り」です。

高野氏はその無謀な若者の熱意を受け止め、そのまま雇い入れてくれました。ここから、私の30年以上にわたる「人間と空間、そしてコミュニティの関係性」を追い求める旅がスタートしたのです。

自分たちの空間を、自分たちの手で創り上げる——そのプロセスそのものをデザインすることこそが、本当に愛される場をつくる。

本コラムでは、高野氏のもとで叩き込まれた「住民参加のまちづくり」の実務と「ピープルズパーク」の精神、そしてそれが現在の園庭づくりにおける「By children」の余白設計へとどう昇華されていったのか、その歩みをご紹介します。

Chapter 01

1993年、情熱だけで叩いた巨匠の門

日本のランドスケープデザインの歴史のなかで、私のキャリアがどのように始まったのか。それは、決して計画的なものではなく、一人の若者の無謀なまでの情熱から始まりました。

🌳 日本の造園界に新風を吹き込んだ巨匠

当時、ランドスケープの巨匠として知られていた高野文彰氏のデザインと思想に、私は深く憧れていました。いつしか「この人のもとで学びたい」という情熱を、抑えられなくなっていったのです。

🚪 アポイントなき「押しかけ弟子入り」

紹介状もアポイントも持たないまま、ただ情熱だけを頼りに高野ランドスケーププランニングの門を叩いた1993年。その無謀とも言える行動を、高野氏は温かく受け止め、そのまま雇い入れてくれました。

🧭 30年以上続く旅のはじまり

この瞬間から、私の「人間と空間、そしてコミュニティの関係性」を追い求める、ランドスケープアーキテクトとしての30年以上にわたる旅がスタートしました。

高野氏のもとでの日々は、単に美しい図面を描く技術を学ぶだけの時間ではありませんでした。そこで叩き込まれたのは、デザインという営みの、もっと本質的な部分——「住民参加のプロセス」だったのです。

Chapter 03

園庭づくりにおける
「By children」の余白設計

この「By people(住民による環境づくり)」の精神は、現在、アトリエアムニーが手がける園庭づくりにおいて「By children(子どもたちが自ら遊びを創造する)」というアプローチへと昇華されています。

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PROCESS 01

「For children」からの脱却

現代の多くの園庭は、既製品のカラフルな遊具が並び、その使い方は「すべり台をすべる」「ブランコを漕ぐ」といったように、大人によってあらかじめ規定(For children)されています。しかし、子どもたちにとって本当に必要なのは、使い方の決まっていない「意図された余白」です。

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PROCESS 02

土手・石・落葉樹という余白の設計

ちょっとした土手の起伏、大きさのそろわない石、風にそよぐ落葉樹。私たちは、子どもたちが自ら「これを使ってどう遊ぼうか?」と工夫し、発見し、挑戦できる空間をデザインします。

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PROCESS 03

1993年から受け継がれるDNA

1993年の押しかけ弟子入りから始まった「住民参加のまちづくり」のDNAは、今、園庭という小さな宇宙のなかで、子どもたちの主体性と創造力を引き出す「余白の設計」として生き続けています。

Conclusion

おわりに——余白から生まれる、子どもたちの物語

「By children」の園庭づくりは、既製品の遊具を並べるよりも、時間も対話も必要になるプロセスです。それでも、高野氏のもとで学んだ「住民参加のプロセスデザイン」を貫くことが、その園にしかない、かけがえのない風景をつくっていくと私たちは考えています。

子どもたちの主体性へ

意図された余白のなかで、自ら考え、自ら遊びを発見する力が育まれます。それは、決められた遊具では得られない育ちです。

その園らしいプロセスへ

ワークショップを重ねる過程そのものが、先生方や保護者、地域の方々にとってもかけがえのない時間になります。

30年の実務知見へ

国営・県営公園クラスの大規模プロジェクトで培った住民参加のノウハウを、園庭という身近なスケールに応用しています。

おわりに ── 1993年の一歩が、今日の園庭に息づく

一人の若者の情熱から始まった「押しかけ弟子入り」。そこで培われた「住民参加のプロセスデザイン」は、30年以上の歳月を経て、子どもたちが自ら遊びを創造する「By children」の園庭という形へと結実しました。この原点を胸に、これからも全国の園の先生方と共に、園庭づくりに携わってまいります。

From People to Nature

「住民参加」の視点は、
どのように「生態系の復元」へとつながったのか。

1993年、高野文彰氏に師事したこの年は、奇しくも日本が「生物多様性条約」を批准した年でもありました。国営・県営公園クラスの自然環境復元プロジェクトの最前線で培った、20年以上にわたるビオトープ施工管理士としての知見を、次のコラムでご紹介します。

生態系復元と生物多様性保全の知見を読む →
Message from Our Expert

代表・飯沼伸久より

1993年に高野文彰氏のもとへ飛び込んだあの日から、もう30年以上が経ちました。当時学んだ「住民参加のプロセスデザイン」は、今もなお私たちの仕事の根幹にあります。園庭づくりにおいても、大切にしているのは同じことです。完成された遊具を配置して終わりにするのではなく、子どもたちや先生方と対話を重ねながら、「使い方の決まっていない余白」をどうデザインするか。それは手間のかかる仕事ですが、その園にしかない風景を育てていく、いちばん確かな方法だと信じています。

ランドスケープアーキテクト / ビオトープ施工管理士 株式会社アトリエアムニー代表 飯沼伸久